京都大学11月祭

麻耶雄嵩さん(2)

―麻耶さんがデビューされたのは学生時代の頃ですが、そのときの周りの反応はどうでしたか?

 親は驚いてましたね。でも、学生だから、親には就職しないで作家一本でやるとはまだ言っていなくて。卒業前に伝えたんですが親はうすうすわかっていたようです。
 ミス研内だと、既に綾辻さん、法月さん、小野さん、我孫子さんたちがデビューされていて、それに続く形だったので、すごいねという感じではなく、まあ頑張れよ、という感じでしたね。綾辻さんがデビューしたときだったらみんなすごいなって思っていたんでしょうけど。
 実際に言われたことはないですけど、サークル外からは、京大ミス研出身の作家はたくさんいるからコネかなんかやろ、って見られてたんやろうと思います。実際当時は新人賞も少なく、他の大学のミス研だと編集の人の目に触れる機会がないけど、京大はあったんやろうなとは思う。妬まれていたとまではいかないけど羨ましがられていた気がしますね。

―ご両親は作家になることに反対なさらなかったのですか?

 デビュー当時はまだ兼業になるかプロになるか決めていなかったんです。学生時代の思い出作りみたいなつもりで当時は書いてましたから。それに作家だけで食っていくのは難しいとは感じていましたし。結局専業でやっていくって言ったときは親もあきらめていたようです。僕は言い出したら聞かないタイプなので。

―専業でやっていこうと決めた理由は何ですか?

 2作目を書いたときに、次も書きたいなという気持ちが強かったので。そのときは学部6年目で、そろそろ進退を決めなあかんという頃だったんです。就職したら、しばらく落ち着いてからなら書く余裕はできるだろうけど、最初の数年は忙しくて書く暇がないだろうし、ろくでもないことになるだろうなと思って、とりあえずは就職せずに書いてみようと考えました。

―初めて読んだ推理小説は何ですか?

 いわゆるジュヴナイルものでいうとホームズやルパンかな。小学1年生ぐらいのとき。小学校2、3年生のときにはちょうど角川映画の横溝正史ブームがあって、横溝正史の大人向けの本を小学校4年生ぐらいのときに読んでいましたね。

―影響を受けた作家や作品はありますか?

 子どもの頃に読んだものは、刷り込みみたいなものとして影響を受けていますね。加えて、クリスティブームが当時あって、『オリエント急行殺人事件』や『ナイル殺人事件』が映画化して、それらにも影響を受けたんですけど、作家としては鮎川哲也さんとジョン・ディクスン・カーになるかな、と思います。中学・高校時代にけっこう大量に読んでいました。この2人は影響というか、なんとか取り込んで自分のものにしたいなという思いは強いですね。

―鮎川哲也さんといえば、「メルカトル鮎」という探偵の名前は鮎川哲也さんからとったとお聞きしました。

 あれは一回生の時、ミス研の「犯人当て例会」で最初に書いた小説に出した探偵ですね。尊敬する鮎川さんの鮎の字をつけておこう、と学生のノリで適当に。こんなこと言うと失礼やけど。

―今でも実在の人物をモデルにすることはありますか?

 今はあまりないですね。学生時代は無邪気にやれていたんですけど。誰がモデルかわかると、似ていないと問題やし、悪いところが似ていても問題やし。同業者をモデルにすることもない。社会派ミステリーのように悪人や政治家とかの実在の人物をモデルにすることもないですし。やるとしても、わからないようにします。あくまで一般向けには創作上の人物という感じで。

―トリックやプロット、登場人物はどのようなときに思いつきますか?

 どんなときに思いつくかわかるとほんとに嬉しいんですけどねえ。比較的多いのは散歩しているときですね。それも短い散歩ではなく小一時間の散歩の後半あたりで頭が空っぽになってきたときに浮かんでくる。とにかく困ったら散歩。登場人物にはあまり困らないですね。トリックやプロットとか目的に合わせてキャラを作ることが多いですし。

『貴族探偵対女探偵』では女探偵を先に推理させて、その後に貴族探偵に正しい推理をさせていますよね。考えるのが難しそうですね。

 そうですね、嫌になりました。あんな設定考えなきゃよかったと後悔しました。女探偵をあまり馬鹿っぽくはしたくないから、それなりの推理をさせなきゃいけなくて、そうすると、急にハードルがあがる。よくある、間抜けな警官がするような推理をさせておくのは、楽ですけど面白くないじゃないですか。そのせいで毎回考えないといけなくてへとへとでした。

―短編と長編両方を書かれていますが、どちらの方が好きですか?

 長編は下準備に時間がかかって、長編に見合うプロットやトリックを考えるとなるとハードルが上がってしまう。書き上げると達成感で楽しくなるんですけどね。短編の方は、ハードルは低いけど、数を書かなければいけない。大体1ヶ月くらいで考えて書くので、長編よりはゆったり構えていられなくて大変というのはあります。ただ、名探偵が推理するシーンが好きなので、それがたくさん書ける点はいいですね。

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