京都大学11月祭

岡崎琢磨さん(3)

―話の着想はどこから得るんですか?

 そうですね。僕の、ミステリを作る一番の方法論としては、まず不思議な出来事とか事件とかを思い浮かべて、それをどうやって解決していくかみたいなところからスタートすることが割と多いです。伏見稲荷の話だったら「同じ時間に別の場所で目撃された」みたいな人がいたら面白いかな、っていうところからスタートしていますね。で、二巻を書く時に、一巻を書く時はそんなに京都っぽい場所を出さなかったのでちょっと京都っぽい場所を出す話も作るかってところから、じゃあ伏見稲荷とか、山登りみたいになっているんでちょっと面白いかな、みたいな。そこから「離れた場所で同じ人が」みたいなことを考えて作っていくっていう方法をとっていますね。

―ミステリのトリックとかっていうのは、ずっと考えているんですか。それとも日常生活の中でパッとひらめくって感じですか?

 いやあもう正直、もちろんアイデアが降ってくることも稀にあるんですけど、基本的にはひたすら探すしかないんですよ。もう、穴を掘るようにひたすらずっと考え続ける、ひねり出す。それしかないですね。だから、タレーランの連作のほうはやっぱりアイデアの数が重要になってくるんで、本当にネタを揃えるのが大変で。やっぱり一巻二巻、特に一巻の時なんかは相当唸りながら何とかかんとかアイデアを揃えたような感じですね。五つくらいの章はすぐ出来ても、残り二つぐらい全然出来ないんですよね。そうやってこう、粘って粘って捻り出したアイデアの方が割と後々いいことが多いんですよ。一巻の時も二巻の時も僕、三章くらいの話が自分でもすごく気に入っているんですけど、それどっちも多分、すごく最後の最後でやっと思いついたアイデアみたいな感じなんですよね。で、やっぱり三巻の時も長編っていうスタイルになったけどアイデアの数とかはやっぱりそれなりに必要で、じゃあ最後もう一つトリックがいるっていう時にしばらくずっと何も出てこなくて、ずっとどうしようどうしようって思っていて最後のアイデアがぱっと浮かんだ時に、もう「これでいけるー!」みたいな感じで、本当に凄くこう、テンションが上がったというか、そういう体験もしましたね。作家さんみなさん口を揃えておっしゃるけど、アイデアは捻り出すしかないですよね基本的に。

―作家活動にサークル時代の作詞みたいなものが生かされているっていう側面はあるんですかね?

 曲を作るということも小説を書くということも、同じゼロから何かを作り出すっていうことでは凄く親和性が高いと思います。作詞とかしてた時に言葉に対して凄く慎重に選んだ経験とかもあるので、そういう意味では曲作りっていうのがかなり近いところにあるかなあって感じですね。もちろん違う部分もあって、曲は基本的にこう割と、本能というか衝動みたいな感じで作っていて、今こういう思いを抱えているから曲にするみたいな感じなんですけど、小説はそうじゃない。全部理論的に作り上げていく感じ。そこは本当に全然、正反対といっていいくらい違いますね。そういう部分もあります。

―ミステリという方向性は初めからもたれていたんですか。

 そうですね。僕が書き始めたきっかけがそもそもミステリ小説を読んでいて、ミステリ面白いなと思ったからなので、最初はミステリとして面白いものを書くっていうのを一番の目的・目標にしていたんですけど、でもまあ書いていてすぐに、ミステリで凝ったことをするよりも小説という分の充実を図ったほうが手ごたえを感じていたんで、すぐにそういう路線にシフトしましたね。最初は「面白いミステリを書きたい」ということから始まりました。なので投稿時代から、もう一貫してミステリしか書いていないですね。

―これからミステリ以外の分野に手を出してみようかっていうのはあるんですか。

 やっぱりこう、力はついてきたと思うんですよね。まだまだ駆け出しですしまだまだですけど、デビューする前に比べたら歴然とした差はあるくらい力はついてきたと思いますね。ミステリという枠にこだわらなくてもいい作品を書けるのではないかなという気持ちは強まってきていますね。今のところミステリしか方法論がないのでしばらくはミステリだろうなとは思いますけど。元々僕の作品を評価してくださる方っていうのは、ミステリ的に優れているっていう褒め方をしてくださるわけではないので、そこに拘る必要なないのかな、と思っていますね。

―最後に京大生や読んでいる方へのメッセージをいただけますか。

 あ、はい。えっと、いろんな選択肢があると思うんですよ今、大学生の時って、僕みたいに突飛な選択肢を選んでも意外と生きていけるんで、あんまりこう、決めてしまわずに、いろんな可能性っていうものを取り上げてみて頑張ってみるといいんじゃないかなと思いますね。まあ学生の時はミュージシャン目指してたんですけど、結果こういう形になって。でも本当に作家になれると思ってた人は僕自身も含めて誰もいなかったんじゃないかと思うんですよ。でも結果なれたし。ということは意外とやればできるんですよ多分。そういう意味で、今、変に自分の幅を狭めて欲しくないなと思いますね。そういうことを頑張って返ってきた時のよろこびって何物にも代えがたいと思うし、僕もそういう部分に関しては誇りに思ってますので、皆さんもそういう、自分のこれっていうものを見つけて頑張ってほしいかなと思いますね。

―ありがとうございました。

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